エストニアのムフ島・ムフ刺繍工房「Männiku Käsitootuba」訪問編

エストニアのムフ島・ムフ刺繍工房「Männiku Käsitootuba」訪問編

ムフ島に行くのは初めてでした。ムフ島へはエストニアの本島から向かうにはバスで比較的簡単に行けます。

左下のピンがムフ島の場所です

島内の移動はバスしかなく、いろいろと周る必要がありましたので、レンタカーを使いました。
実は、島内の移動はバス以外に自転車もありますが、冬は寒く、日暮れも早いため、個人的には安全上お勧めできません。季節問わず森には動物もたくさん住んでいるので、動物と出会った場合も何が起こるかわからないですね。
上記の理由と、隣のサーレマー島に行く必要もあったので、レンタカーで島内を移動していました。レンタカーは時間を有効に使えることと、どこにでもいけて便利な反面、コストもかかるし島のレンタカーはカーナビもないものが多く、昔のドライブのように地図を見ながら運転していました。今はスマホがあるので、シガーソケットからの電源供給でナビとして使うことができるので、シガーソケットの電源供給コードを準備されるのが良いかもしれませんね。
こういう場合は旅行のツアーのほうが行きやすいと思いますね。

夏はシーズンなので島にはたくさんの観光客がいますが、9月末はすでにシーズンオフ。観光客はほとんどいないので、すこし移動中の道も車の往来がすくなく、森の緑が深い場所では日中でも暗いので、心細くなり車の移動でよかったと感じました。

ムフ島はエストニアの中でも特徴的な民族衣装のスカートがいまだに大事に守られている島です。黄色いスカートをみなさん行事の時には身につけます。これら貴重なムフ島の民族衣装についてはムフ島博物館(Muhu Museum)に展示されているので、ムフ島に行かれた際にはほとんどの方が訪問されているのではないかと思います。
伝統衣装の中に用いられる刺繍はムフ刺繍と呼ばれ、お花や植物をモチーフとした絵画のようなリアルな刺繍を施します。

ムフ刺繍は迫力があります。ムフ島に滞在した方は必ずと言っていいほど目にするくらい、ムフ島を表した刺繍です。ぜひ、この刺繍の本物を見に行きたいと思いました。

ムフ島の黄色いスカート この日は博物館のスカートを日干ししていました。

ムフ島博物館から近く(1.5kmほど離れた場所)にMänniku Käsitootubaというお店があります。
ムフ島博物館やMänniku KäsitootubaがあるのはKoguvaという集落にあります。島の中心のLiivaからは車で15分程度の場所で、非常に小さい集落です。

Männiku Käsitootubaはすでに様々な日本の旅行ガイドブックでは案内されている場所ですから、手芸に詳しい方はすでにご存知かもしれません。
私は初めて伺いましたが、お店のような雰囲気ではなく、どこかの知っているお家にお邪魔する感覚です。母屋とは別に、お店の建物がありお花のペインティングが母屋と共にされており、入る前から気分が高揚します。

Männiku Käsitootubaのお店の入り口です

出迎えてくれるのは大きな犬でしたが、とても人懐こくかわいいかったので、もし行かれた時には安心して接してあげてください。

さて、お店の建物はオーナーのSrije(シリエ)さんの工房とそこでできたムフ刺繍の商品を販売するお店が一緒になった空間です。まさに、生産現場から販売まで一緒なのであります。
Srijeさんの製作した作品や商品を見ながら、実際にご本人のお話を伺えるという贅沢な時間を過ごしました。
ワークショップなどもこの場所で行う為、世界中からSrijeさんの工房を目指して手芸の方々が習いに来るそうです。また、観光でもお店でお買い物をされて行く方々がたくさんいらっしゃいます。

私もSrijeさんが作られた素晴らしいタペストリーを拝見しながら、ムフ刺繍についてのお話やSrijeさんの今後の活動など、次から次に出てくる話題にあっという間に1時間半が過ぎてしまいました。
もともとは首都のタリンで暮らしていたそうですが、旦那様の故郷であるムフ島の刺繍に魅せられて引っ越してきました。旦那様がこの工房を全て作ってくださったそうで、家族にも支えてもらえているSrijeさんがうらやましくなりました。お嬢様もムフ刺繍を始めているそうで、これから技術の継承が行われていくのですね。

お店の様子

ムフ島の方々に刺繍を教えてもらいながら、技術を磨き、ご自身でお店と工房を持つまでになりました。
エストニア国内でたくさんの「ムフ刺繍」と言われている商品を見てきましたが、どれもそれっぽいですが、Srijeさんのムフ刺繍を見ると「何が本物か」が顕著にわかります。
ぜひ、ムフ刺繍を購入前に、皆様にも一度「本物」のムフ刺繍を実際にこちらに訪問してご覧になることをおすすめします。(結構遠いので難しいかもしれませんが)こちらで購入されたムフ刺繍の品々は素晴らしい質のものばかりです。

私は刺繍が素敵なベレー帽を購入いたしました。立体的なムフ刺繍が素晴らしく、友達に写真を送ったところ、すぐに購入して欲しいと頼まれました。

頼まれた友人のベレー帽とともに・・・

Sirjeさんはアイディア豊富で、ムフ刺繍をもっと身近にするべく、リアルな生地へのプリント技術を用いてエプロンを作りました。エプロンはすぐ汚れて洗うもなので、今まで刺繍をする発想はありませんでしたが、リアルに刺繍を表現できるプリント技術で、汚しても問題なく洗えるようになりました。
エプロンにもムフ刺繍があると、料理したくなるかもしれませんね。
こちらのエプロンはタリン空港でも販売されているそうです。
また、刺繍を施した靴がありましたが、これまでは、靴底も手仕事で皮をつけたもので、外で履くには弱々しくもったいなくて履けないものでした。靴底を普通のパンブスのようにつけた商品開発を行い素晴らしい外でも履ける靴も販売開始されていました。
お話を伺うに、Sirjeさんは寝る食べる以外は刺繍をされていて、ほとんどの時間をムフ刺繍と過ごしていると言っても過言ではありません。
3年がかりで作られているタペストリーのような大きな作品も見事としかいいようのないものでした。

工房のタペストリー

こちらのSirjeさんをご紹介くださった、ちくちくバルト舎の荒田起久子さんは日本で唯一ムフ刺繍のワークショップを開催されています。本場のムフ島に何度も足を運び、ムフ刺繍の技術を習得されています。webサイトからワークショップやオンラインショップなどご確認いただければ、日本でもエストニア手芸のお話について理解が深まると思います。




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