1世紀のエストニア料理(1918 2018)

1世紀のエストニア料理(1918 2018)

 私は、エストニアの料理本は資料としてかなりたくさん買っています。もちろん仕事として必要だったり資料として購入しています。

しかし、エストニアの出版事情は厳しく、というのもエストニア語を使う人口は130万人程度しかいないため、東京都の約10分の1の人口のマーケットを狙うわけです。そう考えると、いかにエストニアの市場が小さいかがお分かりになるかと思いますが、エストニアでは、本の重版はそれほど多くありません。一度印刷してあまり売れないのがわかると絶版にします。
絶版にすると中古書店でしか見つけることができなくなってしまうので、より購入するのが難しくなります。ですから、「これは!」と思う本はエストニアの場合は、見つけたときに購入することをお勧めします。
特にレシピ本の場合は数カ国語(英語、エストニア語、ドイツ語、ロシア語)に渡って併記されている場合も多くあります。上記の理由から、出版部数を多くするための手段かなと推察しています。

さて、エストニアのレシピ本で今回紹介したいのは、「Sajandi KOKARAAMAT1918 2018(1世紀クックブック 1918 2018」です。中のページはこのサイトにも数ページ載せられていますのでご覧になるとページの構成がわかります。


私が購入したのは2019年ですので、発売されてから1年後に購入しました。2021年7月現在、ネットでも購入できるようですので、まだ在庫は販売されているのではないかと思います。
この本はエストニア語だけで書かれていますが、レシピに使われる単語はそれほど多くないので、レシピについては大体理解できると思います。歴史的なエピソードについては難しいので、エストニア語を知らないと、理解することができないです。
エストニアの本はかなりの割合でハードカバーですので、高級感があります。「買ったな!」という重量感とともに、帰国まで荷物の重量調整をどうするか頭を悩ませます。

この本、何がすごいのかと言いますと、1918年から2018年の100年を1年毎に何が起こったか、そしてどんなものを食べていたか、レシピと共に当時の食器が用いられて再現しています。エストニア語がわからない私でも、写真だけで当時のエストニアの生活が感じられます。

1990年のページ ワッフルのショップに並ぶ人々
1990年のページにあるワッフルの写真


調べ物をしていたところ、我が家のエストニア人が面白いことを言っていました。この本の著者のおひとりがMART LAAR氏。エストニアに詳しい方はご存知かもしれませんが、1992年から1994年、1999年から2001年までエストニアの首相、2010年には国防大臣を務めた政治家でもあります。
元々歴史学者だったということもあります。
しかし、2012年に脳卒中で後遺症が残り、政治家として引退をしたものの、復活を遂げたというすごい逸話があるそうです。まさに不屈の男。我が家のエストニア人はこの方のコンサルティングをされていた方と友達だそうですが、とても素敵な方だそうですよ。歴史学者が作った料理本は世界的にも、珍しいのではないでしょうか。

この本が発売された時のイベントのMART LAAR氏はお元気なご様子でした。
歴史、文化がわかるこの本はかなり重かったですが、良い資料として大事に我が家に鎮座しております。
ワークショップにお越しの方でご希望があれば、ご覧いただけるようにしておきますね。

1974年のページ
1974年の料理写真。