書籍「旅するエストニア料理レシピ」作成エピソード 写真編

書籍「旅するエストニア料理レシピ」作成エピソード 写真編

2021年も終わり、2022年が始まってすでに5日を過ぎていることに驚いています。
さて、昨年10月20日に日本初となるエストニアの料理本を出版したことがもっとも大きなことでした。
企画からは2年ほど経っていましたが、具体的に走り出したのは2021年1月でした。

「わからないことがわからない」という初めての本づくり
本を書いたこともない素人が、初めて作る自費出版書籍ということもあり、無知過ぎて「わからないことがわからない」という幾つもの難局がありました。
「わからない」とはいえ、作ることを決めたからには人を動かし、お金も時間も使っているために完成させなくてはならず、途中で放棄するわけにはいかないわけです。ただひたすら、けもの道すらない荒地をさまざまな人に迷惑をかけたり、お世話になりながら歩いていくという作業でした。
ど素人が自費出版制作から販売まで行うという無謀とも言えることに、さまざまな局面で携わってくださった皆様には、謝罪と感謝を同時にするような気持ちでおります。

レシピ本の要である写真
さて、レシピの写真についてよく尋ねられることがあります。そう、当たり前ですが、レシピ本は写真がなければ始まらない。レシピの要とも言えるその料理を表す写真です。
さらに言いますと、エストニア料理という日本人にとってはほとんど馴染みのない料理をひと目で理解でき、「作ってみたい」「食べてみたい」と魅力的に感じてもらう必要があります。
一番目に浮かんだのは岡山にいる「あの」方でした。「あの」方とは、中庭廣子さん。

エストニアに行ったことがあるカメラマン
実は中庭さんは海外滞在の時に、素晴らしい人物を撮った写真の作品はありますが、レシピや書籍の写真を静物を撮った経験はほとんどないとおっしゃられていました。にもかかわらず、経験のない中庭さんにお願いしたいと思った理由は「エストニアに行ったことがあるから」でした。
2019年、夏から秋に変わる頃、ちょうど私も調査のためにエストニアをめぐっており、スペイン留学の滞在先からフィンランド経由でエストニアに訪れた中庭さんとタリンを数日共に歩きました。言葉では伝えるのが難しい「エストニア感」は現地に行ったことがある人であれば、雰囲気が伝わりやすいと思ったのです。また、中庭さんが映し出す写真はどれも活き活きとして、人を楽しませる魅力がありました。

中庭さんは2020年夏に世界一周旅行の途中でコロナ禍となり、コロンビアで4ヶ月も滞在するという珍しい経験をされていました。その後、故郷の岡山に無事戻り、私が一度お願いした時には、まだ2021年の2月ごろでした。中庭さんの比較的時間が自由だった時期が2021年5月から6月でしたので、その時期に1ヶ月東京の我が家に住み込みで撮影に挑んでいただきました。これは私にとってラッキーでした。
通常はフードスタイリストさんがいて、全て用意されたところに料理がお皿に入れられ、カメラマンがバシバシ撮っていくというものだと思います。しかし、スタイリストもアシスタントもおらず、カメラマンと私だけという条件下でした。となると時間をかけて一人が何役もこなして、撮っていくしかありませんでした。もしかしたらプロが見たら「これはおかしいんじゃないか?」と思う構図もあったかもしれませんが、エストニアで購入した多くの本の雰囲気を参考にしたり、我々が見たエストニアのリアルを一番に表現した結果となりました。

カメラマンの中庭さんお気に入りの南インド料理店にて(画像:筆者撮影)

外ロケ
そして、必要だったのは「外ロケ」です。エストニアは森が多く、緑がたくさんあるので、外で撮った写真は重要でした。自然光は食べ物を一番美味しく見せる何よりものアイテムだということも毎回自然から教えてもらいました。コロナということもあり遠くに行けず、良さそうな撮影場所(木の切り株、テーブルなど)を見つけるため下見に行き、電動自転車を連ねて作った料理とカメラの道具を一式運んでいました。公園では「何をやっているんだ?」と怪しまれながらの撮影はなかなかできない経験でした。

自転車と撮影中の中庭さん(画像:筆者撮影)
撮ったら公園で食べる(画像:筆者撮影)



作ったものを全部食べる
本のために作った料理は、全部捨てるわけにもいかないので、全てカメラマンの中庭さん、我が家に住んでいるエストニア人、私の三人の胃袋に収める必要がありました。満足できる仕上がりにならず、何度か繰り返した時には地獄です。いろんな苦労がありましたが、個人的にはこれが一番辛かったことでした。中庭さんとエストニア人が頑張って食べてくれたので、私はかなり助けられました。
全員「もう、無理だ」となった時に致し方なくご近所様にケーキを2ホール(!)お渡ししたこともありました。そのうち、エストニア料理に疲れてそれ以外の料理を食べるようになりました。毎日のようにエストニア料理を食べているかというと、実は違うんですよね。


そんなエピソードもありますので、ぜひ、拙著を手にされた方は舞台裏を想像しながら楽しんでいただけると嬉しいです。
レシピ本にまつわるお話を今後もブログにアップできればと思っています。

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