エストニアに帰れないなら、雪を見に行くしかない。

エストニアに帰れないなら、雪を見に行くしかない。

コロナ禍が長引き、もうエストニアに一時帰国ができなくなってはや3年。
年に1度は10日ほどの休暇をもらい、エストニアに帰国するのが毎年の楽しみだったのに、それもできず、もっぱらエストニアの親戚とSkype(エストニアらしい!)で週末会話を楽しんでいるのであります。エストニアの地元情報はインターネットが、彼らをつないでいると言っても過言ではないと思います。
「インターネットがあってよかったね」というひと言に尽きます。


金沢行きにした理由
音声や画像を通じてエストニア現地を見聞できても、エストニアの空気、自然、天気までは共有できません。雪はエストニア人にとって、冬の気分を盛り上げる重要アイテムです。
エストニアの雪を見られないという悲しみから、コロナが日本に上陸するギリギリの時期に、函館の雪を見に行くことができました。この時はまだ、こんなに長くエストニアに一時帰国ができないと思っていない時でした。
函館に行ってから二回目のこの冬もエストニア人は「雪欲(ゆきよく)」が発動したようで、雪の降る場所を求めて寒い季節に寒い場所に行くことになりました。今回は石川県金沢市。
候補としては金沢か銀山温泉か秋田かという感じでしたが、実は金沢に選んだ理由はリトアニア人のヴァイオリニストであるジドレさんがお住まいの金沢から東京にいらした時に、「金沢の美術館はかなりたくさんあり、良いですよ」というお話を伺い、金沢に照準を合わせました。
東京に住んでいても、コロナ禍ということもあり、美術館や博物館になかなか行けず、美しいものや本物に触れる機会がめっきり減ってしまっていたのです。それならば、この機会に金沢にある素晴らしい展示物と雪を観に行こうと決めました。
二日目にご多忙の中、金沢の音楽シーンで活躍中の3人のアーティストとお会いすることができました。短い時間ではありましたが、金沢に住んでいらっしゃる方々の魅力も感じることができました。それぞれのご活躍は下記リンクをご覧ください。全国津々浦々で演奏されていますので、どこかで素晴らしい演奏を聴くことができると思います。

音楽シーンで活躍されている金沢在住の
ジドレさん(右から2番目)、山田ゆかりさん(右から3番目)、
ダニエリスさん(右)

ジドレさん Instagram
山田ゆかりさん Instagram
ダニエリスさん オーケストラ・アンサンブル金沢

エストニアの冬
エストニアは北緯59度。最北の地北海道でも45度の日本よりも北に位置しているため、気候としては北海道以北あたりをイメージしてもらえると良いかと思います。アラスカやカムチャッカ半島などと同じ北緯と考えるとどれだけ北に位置しているかご理解しやすいかもしれません。
冬は12月ごろから雪が積もり始め、遅い日の出、早い日の入りの間も街を明るく照らしてくれる存在なので、エストニアでは雪がある冬は歓迎されます。ここ最近は温暖化で雪も少なくなっているようですので、雪がない冬は街も明るく美しくない上に太陽が出ず曇り続きの最悪な状況です。そういう意味では、雪が降る前の11月は海外に逃避する人々が多かったのです。

いざ、金沢へ
日本では冬も終わりに近づいている2月の末ですので、天気予報を毎日確認していたエストニア人は雪はまだあると期待を胸に新幹線に乗車。
長野を過ぎたあたりから、雪景色に変化し、ますます旅行の気分が盛り上がっています。車内からも雪景色をパチリと撮っておりました。

金沢駅前のモニュメント

実はラッキーだった雪景色
金沢に到着すると乗車した東京の温度とはっきりと違うと感じる気温の低さが、「北陸」に来たなと実感します。金沢城はじめ、兼六園を歩くと、お歳を召したスタッフの方々が「今日来たのはラッキーですよ」と教えてくれました。雪がここまでたくさん降るのは我々が到着した日の前日で、さらに晴天という素晴らしい天候。
スタッフの方がおっしゃる通り、雪景色を初日、翌日と堪能できましたが、最終日にはほとんど道路に雪がなくなっていました。


博物館、美術館の宝庫
金沢21世紀博物館、国立工芸館、石川県立美術館、市立金箔工芸館、歴史博物館、鈴木大拙館をはじめとした多くの見どころがあります。初日、最終日はこれらの美術博物館を中心に周り、逸品や熟練した技術を目にすることができました。筆者の美術欲は非常に満たされました。

国立工芸館
金沢21世紀美術館

白銀の白川郷
2日目は白川郷に日帰りしました。白川郷では2mもの積雪となり、一帯は白銀の世界でした。これにはエストニア人もびっくりしていました。というのも2mの積雪ということはエストニアはほとんどないのです。
伝統的な家屋を見学し、甘味処などに立ち寄り、白川郷の雪景色を堪能し、金沢まで戻りました。
白川郷の雪景色をエストニアの家族に見せると、「こんなに雪があるのはエストニアでも経験したことがない! 」と驚いていました。せいぜい50cm程度の高さに積もり、氷点下のため雪は残るものの、最高でも50cm程度だということ。雪欲は完全に満たされ、お腹いっぱいになったようですので、あと一年はおとなしくしていられるのではと期待しています。

現在はコロナと、ロシアがウクライナを侵略という問題も加わり、海外渡航は今までにない厳しい状況が続く中、ますます海外渡航が難しくなっています。
日本で暮らす多くの外国人は帰国が自由にならず、どのように心を保とうかと模索しているのではないでしょうか?なかなか帰れない代わりに、日本のどこかで故郷の景色と重ねることができるのではないかと感じる旅でした。